呼吸器の火山灰防護

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火山灰から呼吸器を守るために

 

火山灰を吸い込むことはうっとうしく、不快感を引き起こすこともあります。 その上、一部の人々は、より深刻な健康上の悪影響を受ける可能性があります。 できるだけ火山灰を浴びないようにしたいと思ったり、そのようにアドバイスを受けたりしたことがあるかも知れません。

Icon 1できるだけ火山灰を浴びないようにしましょう

特に特定のリスクを持つ人々(例えば、乳幼児や高齢者、呼吸器(肺)や心血管(心臓と血管)に持病がある方々)が火山灰を浴びないようにする最も効果的な方法は、火山灰の浮遊していない場所に避難することです。必要であれば建物の中に移動して、しばらく留まるのが理想です。 もし、ご自身の健康状態に大きな不安を感じるのであれば、医療の専門家に相談しましょう。

  • 次の手順に従って、屋内に火山灰が入り込まないようにしましょう。
    • 閉められるドアや窓は閉めましょう。
    • 可能ならば、テープやビニールシート、丸めたタオルなどを使って、屋外に通じる大きな隙間や穴をふさぎましょう。
    • 建物への出入り口は一カ所に限定しましょう。火山灰の付いた服や靴は屋内に持ち込まないようにしましょう。
    • 屋外から空気を取り込む機材(エアコンなど)は使わないようにしましょう。
    • I屋内に火山灰が入り込んだ場合は(湿らせた布などを使って)そっと取り除きましょう。
    • 掃除機はいったん吸い込んだ細かい火山灰を室内にまき散らすので、使わないようにしましょう。
  • 屋内に長時間、留まる場合は次のことに注意しましょう。
    • 屋内が暑くなりすぎないよう気を付け、暑くなりすぎる場合は避難を検討しましょう。
    • 煙を出す調理器、暖房器具などの機材は使わないようにしましょう。
    • 喫煙などの煙を出す行為は控えましょう。
    • 一酸化炭素中毒の危険性があるため、排煙装置のないガスヒーターや屋外用のガス調理器、バーベキューコンロは使わないようにしましょう。

火山灰が降り積もった屋外で清掃作業を行う場合は、取り除く前に水を使って火山灰を湿らせることが大切です。清掃作業の際は、必ずマスクを着用しましょう。

Icon2呼吸用保護具を使うべき状況とは?

火山灰が飛散しているときには、呼吸器を守るための何らかの保護具(例えばマスク)を使いたいと考えるかも知れません。行政や災害支援団体からそのようなアドバイスを受けることもあります。マスクを使うことが想定されるのは、次のような場合です。

  • 大気中に火山灰が飛散している屋外にいる場合(降灰中もしくは降灰後に風や自動車、人々の活動などでいったん積もった火山灰が巻き上がっている場合のいずれも)。
  • 除去・清掃などの作業で屋内もしくは屋外で火山灰が舞い上がっている場合。

目が覚めている間にマスクを着用することは問題ありません。しかし、睡眠中にマスクを着用することは推奨しません。なぜなら、睡眠中にはマスクが隙間なく顔にフィットし続けることは恐らくありえません。しかも、マスクを着けたままでは呼吸しにくくなります。

Icon 3呼吸用保護具を利用すべき人々とは?

呼吸器や心血管に持病がある方は、マスクを着用することが適切か医療の専門家に相談しましょう。どのような種類の呼吸用保護具を使う場合でも、呼吸が苦しくなっていないか注意が必要です。

一般的にマスクは子供の顔にフィットするようには作られていません(現在では子供向けの小さいマスクを作っている業者がありますが、乳児向けのものはありません)。 乳幼児は火山灰の浮遊していない(建物内の)場所に留まって、火山灰をなるべく浴びさせないようにすべきです。 子供にマスクをさせる場合には、その子供にマスクをしっかりとフィットさせる方法を教え、マスクをしても呼吸が苦しくなることがないように十分に注意しましょう。

事業者は、火山灰が浮遊する環境で作業する人々に防じん効果が高いマスクを確実に携行させましょう。各作業者の顔にしっかりとフィットし、それぞれの地域における規定に従ったマスクを利用させましょう。

最も効果的な呼吸用保護具とは?

本節の内容は、どのようなタイプの呼吸用保護具を使うべきかを決めるのに役立つでしょう。 ただし、保護具の価格や入手のしやすさといった他の要因も考慮に入れる必要があります。

呼吸用保護具を着用する場合、特に次の2つの要因が効果に影響します。

  • マスクや素材が粒子をフィルタリングする作用(火山灰が素材を通り抜けるのを防ぐ作用)がどの程度、効果的か。
  • (マスクの端から粒子が入り込むのを防ぐように)マスクや素材がどの程度、顔にぴったり隙間なく密着しているか。
大人にとっての最も効果的な呼吸器の保護方法は、N95マスク(世界の中にはP2、FFP2もしくはDS2と呼んでいる地域もあります)のような、ぴったりと顔に密着し、産業用として認証されたマスクを着用することです。 認証印はマスクに印刷されています。これらのマスクの多くは使い捨てです。
  • このようなマスクは非常に効率的に火山灰を捕捉することができます。これらは通常、大人の顔にフィットするように作られているので、子供には大きすぎる可能性があります。
  • このようなマスクはきつく密着するので、着け心地が悪いと感じるかも知れません。
  • 防じん効果が高いマスクを使うと息苦しくなることがあります。もし呼吸器や心血管に持病がある場合には、それらのマスクがあなたに適切なものか医療の専門家に相談しましょう。
  • このようなマスクには、多くの異なる形状やサイズのものがあります。 折りたたまれたものを広げるマスクや、最初からカップ状になっているマスクなどです。 温かく湿った空気を外に出して快適性を増すように、前面に弁が付いているものもあります。 顔面にぴったりフィットしていれば、これらのどのマスクを使っても、しっかりと火山灰の吸入を防ぐことができます。
認証のないマスクの中には、火山灰に含まれるものの中で最も毒性が高いと考えられる “PM2.5”(直径が2.5ミクロン未満の小さい粒子)を捕捉するように作られていると示されているものがあります。
  • これらのマスクはおそらく火山灰を非常に効率的に捕捉する素材を用いてはいますが、顔にぴったりフィットするデザインになっていないため、全体の性能はそれほど高くない可能性があります。
N95 model
N95マスク

 

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医療用マスク

ひだ状の折り目が付いた標準的な医療用マスクは、顔に隙間なく密着していれば火山灰をしっかりと捕捉できます。隙間があると産業用の認証マスクより防護効果が悪くなります。

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シンプルな健康マスク

(長方形で、ひだ状の折り目がない)シンプルな健康マスクは火山灰をあまりしっかりと捕捉しない上、顔に隙間なく密着させることができません。

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バイク用マスク

カップ状で固い(粉じん防止用快適マスクとも呼ばれる)“おしゃれ用”もしくはバイク用のマスクは産業用の認証マスクや医療用マスクと比べ火山灰の捕捉効果が小さく、顔面への密着性もよくありません。

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布製品

布製品(バンダナやTシャツ、ベール、ハンカチなど)で鼻と口を覆うのは、火山灰の捕捉という点では、ほとんどのマスクに比べ効果が低く、防護効果も高くありません。密着性も低い傾向があります。

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  • 布を何枚か重ねて使うことで火山灰の捕捉性能は向上しますが、それでもほとんどのマスクに比べて火山灰を捕捉する効果は劣ります。
  • マスクや布を濡らしても火山灰を捕捉する性能は向上しません。

マスクの適切な着け方は?

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手順 1

清潔な手でマスクを袋から取り出します。マスクの内側を火山灰で汚さないように、気を付けましょう。

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手順 2

すべての留め具を外し、ひも、もしくはストラップを頭や耳に着ける準備をしましょう。

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手順 3

マスクを鼻と口に密着させましょう。上側のひもを頭の上の方から耳の上にかけ、下側のひもを耳の下にかけ、ひもを頭にフィットさせましょう。

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手順 4

下側のひもは、耳の下側から首のつけ根に来るようにしましょう。マスクが顔全体に密着し、かつ快適であるように、ひもを締めましょう。

 

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手順 5

鼻の上の留め具を両手で優しく押さえ、マスクが鼻全体に密着し、目の下側で顔全体にしっかりとフィットするように調整しましょう。留め具を折り曲げないようにしましょう。

マスクの端を押さえて(頬やあごの周りで)顔に密着させるようにしましょう。

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手順 6

マスクを顔に密着させたら、マスクがずれないように気を付けながら、両手でマスクを覆いましょう。 弁なしマスクの場合は、強く息を吐きましょう。 弁付きマスクの場合は弁を手でふさいで息を吐きましょう。 息を強く吸っても構いません。 マスクの端から空気が出入りするのを感じないくらい強く密着するようマスクのフィット感を調整しましょう。

final fit

 

マスクのストラップが調整できないタイプであれば、頭の周りでぴったりと結びましょう。

 

耳にひもをかけるタイプのマスクの場合は、ひもを上手に使ってマスクを密着させる必要があります (マスクが緩すぎて顔に密着させられない場合には、ひもに結び目を作る必要があるかも知れません)。

 

マスクを密着できない場合は、顔にしっかり密着する別のマスクを探しましょう。

 

 

自分に合った呼吸用保護具を選びましょう

  • 曲げやすい金属製の留め具が鼻の部分に付いているマスクや、ストラップが調整可能なマスクがフィットさせやすいでしょう。顔とマスクの間の隙間をなくすようにマスクの端にスポンジが付いているものも使いやすいでしょう。
  • マスクがしっかりとフィットしているときは、顔とマスクの間に隙間がなく、マスクの端から空気が入り込むのを感じません。
  • 眼鏡やゴーグルのフレームが当たって、マスクと顔の間に隙間ができることがないよう気を付けましょう。
  • 顔ひげが生えていると、マスクと顔の間に隙間ができるので、マスクの防じん効果は低くなります。
  • マスクの上からハンカチなどの布で覆うと、マスクの密着性や防じん効果を高めることができます。ただし、このようにすると快適でないと感じることがあります。また、息苦しくならないように布をきつく縛りすぎないようにしましょう。

 

 

Icon4マスクの効果はどれくらい持続するのか?

  • 使い捨てマスクは、1回だけ使うように作られています(そのため、多くの場合、8時間、使ったら捨てるように袋に表示がされています)。しかし、目詰まりして息がしにくくなったり、空気が漏れたりするようになるまでは使って構いません。 ただし、衛生上の観点から、もっと早い段階で交換することも考慮しましょう。性能が落ちたり、カビが生えたりしていないかも頻繁に点検しましょう。
  • 産業用の認証マスクには使用期限が印字されているものがあります。この期限を過ぎるとメーカーはマスクの素材の品質を保証しません。
  • マスクの供給が限られている場合には、使い捨てマスクであっても粉じんで汚れないことが確実である清潔な袋や箱に保管しておけば再利用して構いません。マスクを粉じんが多い場所に放置してはいけません。
  • 一般市民向けの使い捨てではないマスクもあります。これらの多くは衛生的に使うために洗うことができますが、洗濯をしてもフィルター部分の粒子は除去することができません。 そのため、使い捨てでない場合でも、目詰まりして息苦しくなったり、空気が漏れるようになったりした場合には取り替えましょう。

 


火山灰の健康影響や降灰への備えに関する関連情報にご興味のある方は、下のホームページのIVHHNのパンフレットをご覧ください: http://www.ivhhn.jp/2018/pamphlets.html

この小冊子で紹介した情報は、世界保健機関(WHO)、IVHHN、産業規制機関、マスク製造業者ガイドラインならびに火山噴火時の健康管理コンソーシアム (Health Interventions in Volcanic Eruptions Consortium = HIVEコンソーシアム: http://community.dur.ac.uk/hive.consortium/) による調査に基づいたものです。本調査に関する学術論文が出版されており、下のアドレスより無料でダウンロードできます:

Mueller, W., Horwell, C.J., Apsley, A., Steinle, S., McPherson, S., Cherrie, J.W., Galea, K.S., 2018. The effectiveness of respiratory protection worn by communities to protect from volcanic ash inhalation; Part I: Filtration efficiency tests. International Journal of Hygiene and Environmental Health. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1438463917308003

Steinle, S., Sleeuwenhoek, A., Mueller, W., Horwell, C.J., Apsley, A., Davies, A., Cherrie, J.W., Galea, K.S., 2018. The effectiveness of respiratory protection worn by communities to protect from volcanic ash inhalation; Part II: Total inward leakage tests. International Journal of Hygiene and Environmental Health. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1438463917308027


このページで紹介される内容は、英国ダラム大学のクレア・ホーエル博士(Dr Claire Horwell, Durham University, UK)が執筆し、 英国ケンブリッジ大学のピーター・バクスター博士(Dr Peter Baxter, University of Cambridge, UK)、 汎米保健機構のシロ・ウガルト博士(Dr Ciro Ugarte, Pan American Health Organization)、 英国健康安全参与のマイク・クレイトン博士(Dr Mike Clayton, Health & Safety Executive, UK)、 英国産業医療研究所・ヘリオットワット大学のジョン・チェリー教授(Prof John Cherrie, Institute of Occupational Medicine/Heriot Watt University, UK)、 英国公衆衛生局のニック・ジェント博士(Dr Nick Gent, Public Health England)によって組織される専門家パネルによって精査されました。 ニュージーランド・マッセイ大学のキャロル・スチュアート博士(Dr Carol Stewart, Massey University, New Zealand)ならびに 英国ダラム大学のレナ・ドミネリ教授(Prof Lena Dominelli, Durham University, UK)の編集協力にも感謝いたします。 文書中の画像に利用したモデル(アイネス・トマセク:Ines Tomašekならびにハリスマ・アンディカグミ:Harisma Andikagumi)、マスクの写真を用意したダラム大学画像作成部門(Durham Cartography Unit) ならびにイラストを作成したピエール・イブス・ターニガンド氏(Pierre Yves Tournigand)にも感謝いたします。

最終更新 2018年8月23日 (PDF版からの転載)